イコロの森

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2018.9.27fiveseasons

監督 Q&A


に聞きたい10のこと

2018年ワシントンDC環境映画祭

映画の芸術性を表彰するPolly Krakora Award for Artistry in Filmを本編「Five Seasons ガーデン・オブ・ピート・アウドルフ」で受賞

トーマス・パイパー氏への直撃インタビュー


Q1.Five Seasonsはどんな映画ですか?

A1. Five Seasonsは革新的なランドスケープ・デザイナー、ピート・アウドルフを主人公としたドキュメンタリー。最近はガーデン界に関わる人だけでなく、ピートの図面や植栽の美しさに惹かれてアートやデザイン、ファッション業界までもが注目している。

さすらうように、ピートの自庭や、ニューヨーク、シカゴ、イギリスにあるピートがデザインした庭、植物の自生地を巡るんだ。

晩秋からはじまる1年間、5つの季節をピートに寄り添うと、いままでとは全く違う世界が見えてくる。

 

Q2. この映画プロジェクトはどのように始まったのですか?

A2. ピートのことはシカゴの建築家、ジーン・ギャングのドキュメンタリーを撮っている時に初めて知った。シカゴ中心街にある彼女の建物を撮影する時、ジーンにシカゴ美術館前にあるミレニアム・パークからのロング・ショットを薦められたんだ。ちょうどピートがルーリー・ガーデン(ミレニアム・パーク内)を完成させた頃だった。

そのロング・ショットの撮影で行ったはずなのに、完全にガーデンに取り込まれて、気づいたら散策していた。これが、当時彼の事を何も知らない、私の「ピート・アウドルフ・ガーデン」の初体験。

この「初体験」は忘れなかったし、彼の作品をもっと知って、ガーデンに入ったときの最初の感覚が一体何だったのかを理解したかった。

 

Q3. ピートと一緒に仕事するのはいかがでしたか?

植物をカメラでとらえるのはどうでしたか?

A3. ハイラインでピートと働いた事のある人が、「彼は”暗号”みたいな人」って。私はよく”ザ・オランダ人”と呼んでいる。典型的なオランダ人。

直接的だけど、言葉数多くない様子が少し暗号のようで、ミステリアスな空気を残すんだよね。そんなピートの雰囲気が映画を見る人を惹き付けると思うんだ。

ピートと一緒に仕事ができたのは本当に特別な体験だった。

ドキュメンタリーの対象人物としてユニークで、映画にとって面白そうな場面を一緒に考えてくれる。とても真摯で誠実な方。この映画で自分なりのアプローチがとれたのも、ピートが信頼を寄せてくれたから。芸術肌の人はなかなか人任せにしたがらないから稀な経験だった。

植物の撮影は、ピートの写真をたくさん見て学んだ。どのように彼が庭のデザインを見ているか。でもピートの視点を再現しているのとは違う。ピートと一緒に過ごす時間の中で、私が発見したこと、ガーデンを見る目の変化を観客と共有したかった。

実際、映画の始めの方はカメラワークがゆるいし、どのように植物を撮れば良いかまだ”探っている”ステージでもあるんだ。物語が進むにつれて、対象がはっきりしてくるし、落ち着きがでてくる。

 

Q4. 今までは現代美術を対象としたドキュメンタリーをたくさん撮られてきましたよね。今回似ている点・異なる点はありましたか?

A4.過去の作品もそうだけれど、対象となる人物がクリエイティブなプロセスそのものなんだ。ゼロから何かを創り上げるアーティストの魔法のような過程を垣間みて、映像としてとらえる。

このプロジェクトで最初に心をつかまれたのが、生物を材料としていることの予想だにしなかった複雑さだった。ピートの”材料”は常に変化して、成長して、進化していく。まるで高次元な数式のようで。見た目の美しさ以上に、撮影対象として非常に興味深いと確信したんだ。

 

Q5. 撮影時の驚きや面白い秘話は?

A5. テキサスに行った旅は驚きもあって、とても印象的だった。ピートと仲間たちはすでに西テキサスのマーファから2日間かけて車で横断しているところに少しだけ合流したんだ。

アメリカ人の私ですら、テキサス州が一つの国と文化であることを忘れるけど、独特だよね。特にあのバーベキューのシーン、ピートの目を通してみてたら爆笑もんだった!

 

Q6. ピートや世界のプランツマンやデザイナーと出会って、植物やガーデンに対する印象は変わりましたか?

A6. プロジェクト前に植物もガーデンの知識もなく始めたから、ものすごく習得が大きかった。ピートと私で、どっちが先に映像監督/ガーデナーとして腕をあげるか競い合っているんだ。いまの所、どっこいどっこいだな(笑)

何よりも大きく影響を受けたのが、ヒトと自然の深いつながり。都市部ではピートのガーデンが我々が失ったり、疎遠になってきたものと再びつながる場面を与えてくれる。ピートのガーデンの撮影後や自然に触れてニューヨークに戻ると、不思議といつも気分が軽くなっている。

 

Q7.風の音などの音響や音楽がこの映画の中では立役者のように感じます。選曲について少し教えてもらえますか?

A7. サウンドトラック(自然の環境音と音楽)はとても重要視していた。このプロジェクトの野心として、ガーデンにいる時の体験を再現して、ピートのガーデンからあふれる感情を表現したかった。五感で感じる中で「音」はものすごく重要だから、編集では音をデザインすることに重きを置いたんだ。

 

Q8.配給会社ではなく、なぜ我々のようなガーデナーに配給を?

A8. アメリカとカナダの映画館公開は大変盛況で、この夏にはイギリスでもいくつかの映画館での上映が決定している。何もピートのことも知らない、植物にも興味のないような一般のお客さんがこの映画を楽しんでもらえているのは本当に嬉しい。

でもガーデナーには、より深い敬意を持っている。私自身たくさん教えてもらったし、この映画に熱心な方も多く、ガーデン好きの人たちに届くようにしたい。ピートと共鳴できるようなガーデナーやデザイナーを通して広めるのが一番いい方法だと思ったんだ。

 

Q9. 次に控えている新しいプロジェクトは?

A9. Five Seasonsと同時期に実はもうひとつ映画をつくっていたんだ。ニューヨークに拠点をおく、ローテク(Lot-ek)という貨物用コンテナでロフトやオフィスをつくる建築事務所。

ガーデン、自然、ピートとは無縁に思うかもしれないけれど、彼らも普段見過ごされるような所にある美しさ(貨物コンテナとかね)に言及していて、ピートの創造性の元となる考え方と共通している。

ガーデン・植物のプロジェクトにも意欲的に取りかかっている。美しい空間で仕事できるなんて最高じゃないか!この先、美しい庭を撮影したり、まだ訪れたことのない日本で撮影する機会が増えるといいな。

 

Q10. 最後に日本のみなさんへメッセージをお願いします。

A10. 映画を見た感想で一番好きなのが、「世界を見る目が変わった!」。

アートは見る目を変える力があるし、ピートはガーデンでそれをなし得ている。美しく思えるものが増える。日本人のデザインへの関心の高さやその歴史が世界に感動と恩恵を与えている。この映画とピートの功績を通じて、少しでも恩返しできればいいな。

あらためて、この映画を心待ちにしているガーデンや植物好きの熱心な観客のみなさんに感謝しています。撮影を通して出会ったピートの同僚たちも皆、心地よく迎え入れてくれた。SNSを通して輪が広まるにつれて、さらに実感している。これは素晴らしいコミュニティーだし、自然・生き物を相手に仕事をする魅力も感じている。このような巡り会いがあったことを光栄に思っている。

<トーマス・パイパー略歴>

現代美術を中心に撮影するノンフィクション映像作家。

チェッカーボード・フィルムズ(Checkerboard Films)の製作責任者として25本以上の現代画家や彫刻家、写真家、建築家、作家などを撮りつづけ、監督、撮影、編集に携わってきた。

2008年モントリオール国際芸術映画祭にてBest Film for Television賞をアメリカの著名な画家、エルズワース・ケリーを題材としたドキュメンタリーEllsworth Kelly: Fragmentsで受賞。フランク・ロイド・ライト設計のグッゲンハイム美術館の創設50周年にはArt, Architecture, and Innovation: Celebrating the Guggenheim Museumを撮影。今までにピカソやソル・レウィット、アレックス・カッツ、ロイ・リキテンスタイン、キキ・スミス、建築家のトム・メイン、ピーター・アイゼンマン、ディラー・スコフィディオ+レンフロ、スティーヴン・ホールなど、名だたるアーティストを撮影してきている。