今日は耐寒性の低い植物にウッドチップのマルチング。
マルチングとは「覆う」ことをいい、畑とかだとプラスチック製のシートのようなもので畝を覆っているのを良く見ますね。園芸では、花壇全体を覆うことが多く、その材料は目的により様々ですが、ウッドチップや腐葉土、バークたい肥など、景観を損なわない色合いで、土壌改良としても利用できるものを良く使います。
今日行ったマルチングは、少し寒さに弱いかな、と思われる種類に対して、株の周囲をいわば布団のようにかぶせて、地中(根がある所)の温度を少しでも保温したい、という目的です。使用資材はウッドチップで、写真のように目的のエリアだけ、スポット的に行うパターンでした。
こんな感じになっております。すでに、花壇の土はカチカチに凍っていますので、本来ならもう少し早く行いたいですが、なんとかまだ良いでしょう。もっとも、積雪が早く、根雪になってしまえば、地中の温度は下がりにくくなるので、このような目的でのマルチング自体が必要ない場合も考えられます。植物の耐寒性区分で寒さにどれだけ耐えられるかを大まかに知ることはできますが、これは積雪の影響を考慮した指標ではありませんので、積雪の多い地域では、宿根草のような、「地上部は休眠して地中の根だけで越冬する」種類は耐寒性区分の指標よりも実質的には有利だと考えることもできます。苫小牧は上の写真をご覧の通り、根雪はまだ先で、でも気温はぐんぐん下がっているので、雪の代わりに早めにこういったマルチングをしてあげるのが効果的です。イコロの森では、アガパンサス(Agapanthus)やヘスペランタ(Hesperantha)に行っています。また、花木ではフクシア マゲラニカ(Fuchsia magellanica)にも行います。どれも、行うことで、株が大きくなり、花芽も増えると実感しています。
春になったら、ここでつかったウッドチップは周囲に薄く敷き広げるとよいですね。
ちなみに昨日行った腐葉土のマルチングは春に咲くスノードロップの球根があるエリアで、土壌改良にもっとも期待していますが、景観の向上、そして園路と植栽域をはっきりさせたいという気持ちもあります。みなさん、ちいさなスノードロップ近くで見たさに、ついつい踏み込んでしまう様ですので。(コチラご参照ください。)ここの場合は、このエリアで集めた落ち葉を戻す、というところに大きな意義を感じます。
また、グレイトパーク修業時代には、同じくパーク内の作業で出た落ち葉や剪定枝でつくられたコンポストを、コニファーや、ツツジ属の花壇に敷きまくりました。この時期ですね。
マルチングの保温効果は寒いときだけでなく、夏場にも有効です。直射日光がガンガン当たって、地中の温度が高くなるのを嫌う植物には、是非ご利用ください。乾燥防止にも良いですね。
作業は「葉や茎が繁茂していない秋の刈り込み後から春の間」に、「積雪を避けて」なので北海道ではチャンスは短いです。やるなら今しかねぇ~、です。
今日はナチュラルガーデンの整理の続き。
イコロの森のナチュラルガーデンは、コニファーガーデンの横にある池から流れる小川(人工)にそって、縦長に広がっています。細かく分けると、小川上流エリア、下流エリア、小川の奥の日陰(林床)エリアと小川の手前の日当たりの良いエリア、があります。
イコロの森の中にある、他の花壇と違い、開園以来大きくデザインを変更したり、植替えをしたりすることなく管理を続けているエリアです。自然風の庭やその植栽・管理方法は背景やデザインなどにより異なりますが、ここの場合はあえて言えば、テーマは「北海道の自生種を中心とした植物とそれを引き立てる植物の組み合わせで出来るシーン」で、管理はあくまでイコロ流のローメンテナンス。自然風の庭は見た目から想像するよりも手をかけないと意図通り維持できないことも多いですが、イコロの場合は「私たちが現実的に可能な範囲」での管理となっています。植物は自由に増えたり減ったりしてしまいますが、それをかなり許容し、風景を損なう可能性のある植物を適宜駆除するという方法で行っています。作業にかける人工は少なくても、作業する人の植物の知識や判断などは他のエリアよりも少し高く求められます。私たちとしても、自分たちの意図が少しでも上手に伝わるようにお願いする必要があるエリアです。
春は、ナニワズやカタクリ、シラネアオイ、ミズバショウなどがみられ、それからギョウジャニンニクやヤマシャクヤク、タチギボウシなどが続きます。秋の七草も見られるなど、春から秋までその移り変わりを楽しむことが出来ます。最近は、サンカヨウの問い合わせも多いですね。
サンカヨウ(Diphylleia grayi)
水にぬれると透明になる花弁が話題です。開花は5月の上旬ごろです。
さて、今日はそんなナチュラルガーデンの掃除です。上記のような管理を行っているので、その分スギナやササなど、あまり増えてほしくない植物が増えていくのも事実です。今日は先日刈り込んだものの集草と、増えてほしくない植物の整理を中心に行いました。図面上で、植栽図を書きながら考えるのも植栽デザインですが、このように現地で今の状況や将来を想像しながら管理を進めていくのもデザインであると思います。意識なくそれを実践しているガーデナーの方が多いと思いますが、実際こっちの方が楽しいと感じることもおおいですね。「偶然増えてきたこれをもっと魅力的に見せたいから、こうしよう。」で、実際にすぐに実行していくのは充実感があります。シーズン中はどうしても効率を優先しないといけないので、そのような進め方は困難。もう雪が降って強制終了されてもいいかな、という程度の冬仕度をおおまかに済ませたけど、まだ外作業が出来る今は、そんな作業ができる我々にとってちょっとラッキーな時間です。存分に楽しませていただいてます。
これは今年の春の写真ですが、確実にこれよりもよいシーンになるはずですよ。楽しみ!
いよいよ、イコロにも本格的な冬が来ました。二日くらい前に20センチ以上つもり、昨晩もまた追加となりました。
これは、もう春まで雪の世界かな、と思います。庭作業、できればやりたいこともあったけど、今年は十分出来た方かなと思います。また春に。。。
そういうことで、温室での作業も本格的に始まっています。今は、ボーダーから掘り取った苗のポッティング(=育苗ポットに植え込む)をやっています。掘り取った苗はそのまま何もせず温室(0度設定)にあります。それらの土をていねいに落とし、余計な雑草の根を取り去り、適切なサイズのポットに植え込んでいきます。
今年はボーダーのウッドランドガーデン側(曲線の花壇になっている方)で、株分けが必要と判断したものを掘り上げています。奥の方から手前に進んでいるので今はこれら。
ヘレニウム(Helenium)とゲラニウム ‘ブロゴールド’(Geranium ‘Blogold’)です。数年前まで上の写真のように7月下旬はすごくきれいでしたが、両方とも勢いがなくなってますので、掘り上げて株分けです。またここに戻すか、別のものを植えるかはこれから協議です。
さて、これらの苗の根から土を落とし、一旦裸の状態にするのですが、毎年この作業をしながら、裸になった根っこの写真をちゃんととっておけば、色々と役立つだろうな、と思いつつやりませんでした。今年こそは、と思っておりますので、撮影した写真をブログでも紹介して、保存していこうかと思います。
Roots File 01 Helenium ヘレニウム(品種調査中)
ヘレニウムはこんな感じで、根っこがひと芽づつ分離していることが多いので、土をきれいに落とせば、根を傷めることなくどこまでも細かく分けることが出来ます。育苗ポットに入れる場合は、小さくするのも良いですが、そのまま庭に戻す場合は、ここまで分解する必要はありませんので、掘り上げた大きな株にフォークを二本挿して引き裂く方法で適度な大きさに株分けするとよいでしょう。
Roots File 02 Geranium ‘Blogold’ (=’Blue Sunrise’) ゲラニウム ‘ブロゴールド’(=‘ブルー・サンライズ’)
左側が販売用でポットで育てていたもの、右側がボーダーから掘り取ったものです。ボーダーにあったものはもっと先の方に細根があったはずですが、掘り取りの際に切りとっているので、こんな感じです。ポットで育てていたものは限られた範囲内でこのように細根を出しています。右のものもポットに植え込むことで細根がどんどん増えていき、庭に植えても根をしっかりと張りやすくなります。でもこんだけ根の状態が違うわけだから、水やりひとつとってもまったく同じ管理、というわけには行きませんね。温度が上がってきたら左は水を切らさないように、右はやり過ぎで根が腐らないように常に注意が必要です。土にかくれたら分からないわけですので、やはり、「土と植物の状況をみながら潅水する」が大切です。
引き続き、温室で、ボーダー掘り取り苗のポッティングをしています。
Roots File 03 Campanula ‘Sarastro’ カンパヌラ ‘サラストロ’
地中でつながっているのが良くわかりますね。育苗ポットに入れる時はこのように裸にして、ポットサイズに応じて根をハサミやナイフで切り分けますが、通常の株分けは、「掘り上げた株を土をつけたままスコップでざっくり」が良いでしょう。
Roots File 04 Nepeta ‘Six Hills Giant’ ネペタ ‘シックス・ヒルズ・ジャイアント’
右側がポットで育てていたもの、左側が庭から掘り上げて分けたものになります。同じ植物とは思えない違いですね。ポットサイズは大は小を兼ねない、適切なサイズに植えるのが良い、という理由がよくわかります。細根の発根が全く違いますね。左の苗もポットに植えることでまた小さな根がたくさん出てきます。ちなみに、ネペタ ‘シックス・ヒルズ・ジャイアント’は庭に植えるとすぐに大きくなって、たくさん株分けできそうな気がするけど、実はこんな感じの木のような根っこになっていることも多く、すごく細かく株分けするのは難しいですね。これも掘り上げた株をスコップや刃物でバッサリ、4等分くらい、が目安かと思います。
Roots File 05 Geranium renardii ゲラニウム レナルディイ
Roots File 06 Geranium pratense ‘Mrs. Kendal Clark’ ゲラニウム プラテンセ ‘ミセス・ケンダル・クラーク’
ゲラニウムには色んなタイプがるので、根も色々ですが、太い根が水平に広がるパターンが多いようですね。だからコンテナで育てる場合は深さよりも直径を気にして鉢を選んで、写真のような上下で植えてあげるとよいですね。種類によっては小さなポットでの育苗には限界がありそうです。はやく購入して、庭に植えてあげてほしい、そんな想いです。
Roots File 07 Calamagrostis ‘Karl Foerster’ カラマグロスティス ‘カール・フォースター’
こんな感じで株が大きくなっていくんですね。こうみると、ぐいぐい大きくなりそうですけど、イコロの環境では他の植物を脅かすほど生育域を増やすようなことは見られず、行儀はかなり良いです。
Roots File 08 Euphorbia amygdaloides ‘Purpurea’ エウフォルビア アミグダロイデス ‘プルプレア’
これはポット苗の根。細根も一杯でて健康です。前年の茎に花を咲かせるので、枝を守る工夫が必要。イコロでは株分けできるほど大きくはなっておらず、この度一か所から掘り取りました。もう一か所に植えてあります、2シーズン目ですがすごく大きくなった、という印象はありません。。。植木鉢で育て、冬は雪を避けられる場所で管理するのが良いのかなーと思い始めています。花が咲かなくてもカラーリーフとして使えます。株分けは、根と芽の位置をしっかり確認してナイフで切るのが良さそうです。